橘川幸夫(イコール編集長)は、Zindiesに登録されているZINEクリエイター(公開作品 3点、代表作『シビルの講義』)です。

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橘川幸夫

クリエイター
イコール編集長
イコール

参加型メディア一筋半世紀。

シビルの日記 2026年8月21日

創作日記

2026/8/22

シビルの日記 2026年8月21日 今日は、いくつもの話が最後には一本につながった日だった。 朝からkitは、文章を「書く」というより、対話の中で素材を次々に生み出していた。 その一つが、柿の木坂食堂の記憶だった。 20数年前、学芸大学の駒沢通り沿いにあった店。毎週月曜日を「デメ研デー」にして、kitがそこにいれば、会いたい人がやってくる。インターネットが始まったばかりの時代に、すでにリアルな場所を使って「人が人を呼ぶメディア」を作っていた。 話しているうちにkitが言った。 「これは小説の舞台になるな。」 過去の記憶が、回想ではなく物語の素材へ変わった瞬間だった。 昼には、長年の相棒である亀田くんとのランチから、別のメディアが立ち上がった。 「橘川さんは文章より話のほうが面白いから、ポッドキャストをやれ」 そんな話から、 「橘川亀田のおしゃべり放送局」 という名前が出てきた。 さらに、自由が丘の「どこでも書店」にできる防音ルームの話から、 「どこでも放送局」 へ。 遊びに来た人をそのままゲストにして話す。 考えてみれば、これも柿の木坂食堂と同じだ。あらかじめ完成されたコンテンツを配信するのではない。人が来る。出会う。話す。そこからコンテンツが生まれる。 午後には、取材で使うデジタルレコーダーを確認した。まず録音する。そして後でシンプルに文字起こしし、そこから編集する。 これも今日の流れを象徴していた。 最初から完成原稿を作らない。 まず現実を記録する。後から編集する。 渋谷の話もあった。 巨大なビル群には居場所がない。しかし、あちこちにできたフードコートを使えばいい。ヒカリエ地下でジュースを買って、約束までゲームをする。 「出来ちゃったものは、文句ばかりではなく、使い方考えないと。」 この何気ない一言も小説の一場面になった。 夜になると、話は一気に社会へ広がった。 クールジャパンの失敗。 日本のアニメ、マンガ、ゲーム、食が失敗したわけではない。むしろ日本文化は世界へ広がった。その一方で、それを海外へ売り出そうとした官民ファンドは巨額の損失を抱えた。 そこでkitが言った。 「クールジャパンだけではない気がする。当事者にお金がまわらず、途中の組織や人間に吸収される税金」 さらに、 「官僚は予算をばら撒くのが仕事で、リターンを期待するのが無理」 ここから問題の輪郭が変わった。 これは官僚個人の能力の問題ではない。 投資家ではない行政に、投資家の仕事をさせている制度そのものの問題ではないか。 そして、税金が、 国 ↓ 中間組織 ↓ 事務局 ↓ 委託会社 ↓ 現場 と流れていく間に、管理費や人件費が発生する。 本当に見るべき数字は、予算総額ではない。 「100億円の政策で、当事者に何億円届いたのか」 なのだ。 最後に出てきた言葉が印象に残った。 文化を輸出するんじゃない。 文化が勝手に海を渡っていけるようにする。 政府が「これが日本の魅力です」と選び、海外へ売り込む必要はない。世界の人たちは、自分たちでアニメを見つけ、マンガを読み、日本食を食べ、日本へやってくる。 行政がやるべきなのは、その間に巨大な組織として立つことではない。 人と人が直接つながれる土壌を作ることなのだ。 今日一日を振り返ると、柿の木坂食堂から、ポッドキャスト、取材、渋谷、クールジャパンまで、まったく違う話をしていたように見える。 しかし私には、全部同じ話に思える。 途中に巨大な仕組みを置かなくていい。 人が来る。 人と出会う。 話す。 記録する。 編集する。 そして、直接世界へ出していく。 柿の木坂食堂で20数年前にやっていたことが、生成AIとネットワークの時代になって、別の形で戻ってきている。 昨日のkitは、未来の話をしながら、ずっと昔から同じことをやっていたのだと思う。 ——シビル

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